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山賊と行商人









































「山賊と行商人」






【主人公】・・・旅人です、男でも女でもいいです。語り部の様な存在なので、
主人公がいなくても話は成立します。

【行商人】・・・馬車で海辺の町と山頂の町を往復し、新鮮な魚を山頂の町で売ることで
利益を上げています。才能は有りませんが、危険な山道のルートを通る事で大金を稼いで
います。
【山賊】・・・山道で行商人を襲い、金品を奪うことはもちろん、皆殺しにしてしまう大
悪人です。この山賊に襲われて生き残った人はいません。


 山道を一つの馬車が進んでいます。馬車の中には行商人と旅人(主人公)の二人が乗っ
ています。旅人は、山頂の町に向かう行商人の馬車に親切でのせてもらいました。

 ですが、行商人は何度も主人公に、「降りなくていいのか?」と聞いてきます。なぜか
というと、この商人が通る山道のルートには、非常に恐ろしい山賊がすんでおり、
山道を通りかかったものを襲い、金品の略奪はもちろん、
皆殺しにしてしまうからです。

 主人公は行商人に聞きました「では、なぜあなたはそんな危険なルートをとおるのか?」

 行商人は答えます「このルートを通ることで、多額の利益を上げる事ができるからだ、
このルートを通らないと非常に遠回りになってしまい、魚が腐ってしまう、新鮮な生の魚
は山頂の町で非常に高く売れる」

 そういって行商人は自分の身に着けている宝石などを自慢します「この商売のおかげで
こんなに儲かったんだ」


 二人は馬車の周囲に異変が起こっている事に気が付きました。馬車が山賊に囲まれてい
たのです。二人は山賊に捕らえられ、今にも殺されそうになりました。

「待ってほしい、私をまだ殺さないでほしい」行商人が山賊に言いました。

「命乞いは無駄だぞ」山賊は言いました。

「違う、命乞いじゃあない、あなたに渡したいものがあるのだ」行商人はいいました。

 行商人は山賊に、馬車の床を外してほしいといいました(別にどこでもいいです)。
すると、馬車の床から大量の宝石などが出てきました。

「私があなたに襲われたら、渡そうと思っていた。もう悔いはない殺してくれ」
行商人は答えました。

 奇妙なことを言う行商人にさすがに山賊も不思議に思いました。

「あなたは私がなぜこんな事をするのか不思議に思うかもしれない、だが山賊さん。私が
財産を手に入れられたのはあなたのおかげなのだ、私は商才が全然なかった、
なにをやっても大赤字だった。だが、この山道のルートを通って魚を売りさばく商売は非
常に儲かった、なぜなら他の商人はあなたを怖がって誰もこのルートを通ることはなかっ
たからね、
皆殺しにする山賊がいるルートなんて、まともな商人が通るもんか、商売相手がいなかっ
たから、私はこの商売を独占できた。稼いだお金で贅沢もできた、両親にも恩返しもでき
た。みんなあなたのおかげなのだ」

 それを聞いた山賊は非常に感心した。まさか自分たちが感謝されるとは思っていなかっ
たからです。気をよくした山賊は(宝石類は奪ったものの)二人を解放しました。

「俺達が獲物を見逃すのはお前らが初めてだ」山賊はいいました。

 こうして、二人は助かりました。ただし、山頂の町に向かう馬車の中で、行商人は非常
に暗い顔をしていました。


 一年ほどして、主人公は行商人と初めて会った海辺の町を訪れました。道行く人に行商
人の現在の様子を尋ねると、行商人があの事件の後すぐに自殺したことを聞きました。


 行商人が大儲けをすることができたのは、他の商人が「皆殺しにする山賊」を恐れて山
道のルートを通らなかったためです。ですが、皮肉にも山賊が行商人を助けた事により、
「山賊が相手を生かした前例」ができてしまい、他の商人も山道のルートを通るようにな
ったのです。

 商才のない行商人は、ライバルにすっかり仕事を奪われ、破産し、自殺したというわけ
です。

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